レガシーシステム脱却のメリット・進め方・注意点をプロが解説

経営リスクの低減とセキュリティ強化

古いシステムは、現代のサイバー攻撃に対する防御が脆弱であったり、システムのブラックボックス化により障害発生時の原因特定が困難であったりするなど、多くのリスクを内包しています。特に、公式サポートが終了したOSやソフトウェアの利用は、セキュリティパッチが提供されなくなるため非常に危険です。システムを最新化することで、これらの脅威から企業の重要な情報資産を守り、安定した事業継続性を確保することにつながります。

業務効率化と生産性の向上

レガシーシステムは、個別の業務に特化して構築されていることが多く、部門間のデータ連携がスムーズにいかないケースが散見されます。手作業でのデータ入力や転記が多発し、従業員の負担増や生産性の低下を招いていることも少なくありません。最新のシステムは、データの一元管理や連携を前提に設計されているため、業務プロセス全体が効率化され、組織全体の生産性向上に大きく寄与します。

ビジネス環境の変化への迅速な対応

市場のニーズやビジネスモデルが目まぐるしく変化する現代において、ビジネスの俊敏性（アジリティ）は企業の生命線です。レガシーシステムは、その硬直的な構造から、新しいサービスやツールとの連携、機能拡張が難しい場合があります。柔軟性の高い最新のシステムへ移行することで、市場の変化に素早く対応し、新たなビジネスチャンスを逃さない強固な経営基盤を構築できます。

IT人材の確保と技術の継承

レガシーシステムの維持には、古い開発言語や技術に精通した特定の技術者が必要となり、属人化を招きがちです。これらの技術を扱えるエンジニアは年々減少しており、採用が困難になるばかりか、退職による技術継承の問題も深刻化します。広く普及しているモダンな技術基盤へ刷新することで、若手のエンジニアが活躍できる環境が整い、IT人材の安定的な確保と育成が可能になります。

モダナイゼーションの主な手法

脱却のためのアプローチは、主に3つに分類されます。

• リプレイス：既存システムを廃棄し、業務プロセスを全面的に見直して新しいシステムを構築する手法
• リホスト：アプリケーションの資産は活かしつつ、サーバーなどのインフラだけをクラウドといった新しい環境への移行
• リライト：システムの仕様や機能を維持したまま、プログラム言語などを現代的なものへ書き換える手法

それぞれのメリットやコスト、移行期間などを比較検討し、最適な手法を選ぶ必要があります。

成功に導く3つのステップ

どの手法を選択するにせよ、成功のためには段階的なアプローチが不可欠です。

ステップ1：現状把握と課題の可視化

まずは既存システムを詳細に調査・分析し、機能やデータの全体像、潜んでいる課題を明確にします。

ステップ2：明確な移行計画の策定

現状分析の結果をもとに、移行の目的、範囲、予算、スケジュールを具体的に定めた計画を策定します。

ステップ3：段階的な移行と検証

業務への影響を最小限に抑えるため、機能単位で少しずつ移行を進め、その都度、入念なテストと検証を繰り返します。

目的の明確化と社内での合意形成

移行プロジェクトを開始する前に、「何のためにシステムを刷新するのか」という目的を明確にすることが不可欠です。単にシステムを新しくすること自体が目的化してしまうと、現場の業務実態と乖離した使いにくいシステムになったり、費用対効果が見合わなくなったりするおそれがあります。経営層、IT部門、そして実際にシステムを利用する業務部門の間で目的を共有し、全社的な合意を形成することが成功の第一歩です。

業務への影響を最小限に抑える移行計画

システムの移行期間中に、既存の業務が停止してしまう事態は絶対に避けなければなりません。移行に伴う業務への影響範囲を事前に特定し、それを最小限に抑えるための周到な計画が求められます。例えば、休日に移行作業を実施する、影響の少ない部門から段階的に移行するなど、具体的なスケジュールを策定します。また、万が一のトラブルに備えて、迅速に元の状態に戻せる切り戻し計画を準備しておくことも重要です。

専門知識を持つ信頼できるパートナーの選定

レガシーシステムの移行は、非常に高度な技術と専門知識を要する複雑なプロジェクトです。自社のリソースだけで完遂するのが難しいケースも少なくありません。その際は、豊富な実績と専門知識を持つ外部のパートナー企業を選定することが有効な選択肢となります。技術力はもちろんのこと、自社のビジネスを深く理解し、プロジェクト完了まで手厚くサポートしてくれる、信頼に足るパートナーを見極めることが成功の鍵を握ります。